Aplir 23, 2019

Racing Horses/Horse Racing/Horses

頂点を見据えた馬だけが刻めるラップ

プルクラにシャケトラの姿を見る

プルクラ(3牡 美浦・堀宣行)、オセアグレイト(3牡 美浦・菊川正達)

2019年4月21日、熱くなった一戦です。
4月21日 東京 3R 3歳未勝利 混合[指定] 芝2400 9頭。
初出走のプルクラ(3牡 美浦・堀宣行)は、同馬主のシャケトラ(牡6 栗東・角居勝彦)の得意とする長距離(2400m)でデビュー。
シャケトラの生き写しかと思えるような粘り強い競馬で、接戦の末、勝利しました。

つい最近のことで、3月17日、シャケトラが調教中に骨折し、その日の朝に安楽死を選ぶこととなりました。その3月17日はシャケトラの誕生日でした。


このレースについて。
プルクラは、パドックで周回を重ねるごとにテンションが上がり、パドックで立ち上がってしまいました。
「とまれ」の号令が掛かって、調教師が現れてても収まらず、馬と立ち上がる馬をひく厩務員を宥めるかのような光景も見られました。
石橋脩騎手が騎乗するためパドックに現れても、テンションは下がることはなく、観客の前で安全を保っての騎乗はできないと判断したのか、周回周は騎乗せず、周回を終えると速やかに地下馬道へ消えて行きました。

なんと、地下馬道を通ってターフに現れたプルクラは、落ち着きを取り戻し、準備はできているという状態になっていました。
初戦ということと、他の馬たちとの同列を保って、先出しのようなこともありませんでした。
ここまでの管理調教は、さすが堀先生だ、としか言いようがないです。(堀厩舎を応援)

レースでは、ゴール2ハロン前で一番人気だったオセアグレイトと叩き合いの直線を駆け抜け、プルクラが半馬身差で1着入線を果たしました。
ありがとう、プルクラ。


個人的な見解ですが、残り2ハロンの叩き合いに、天皇賞春を目指して調教していたシャケトラの何か見えない力と、金子オーナーの強運を見たように思いました。

「ボクが天皇賞を絶対取りにいくよ、シャケトラ!!」
「絶対に、絶対に、絶対に勝ちを譲らない ー!」


プルクラにも、こんな意思が宿っているとさえ思えるくらい、素晴らしいレースでした。

石橋脩騎手も、プルクラの力はもちろん、シャケトラや、馬主、調教師の思いをきっとどこかで感じていたのではないでしょうか。
共に競り合い叩き合ったオセアグレイトと、その鞍上の野中悠太郎騎手も、素晴らしい騎乗を見せてくれて、ありがとう。


レースのラップタイム

レース 1ハロン 2ハロン 3ハロン 4ハロン 5ハロン 6ハロン 7ハロン 8ハロン 9ハロン 10ハロン 11ハロン 12ハロン トータル
3歳未勝利 12.9 11.4 12.7 12.9 12.5 12.3 12.4 12.4 12.7 11.7 11.4 11.8 147.1(2′27″1)

未勝利戦で勝ち上がれない馬たち(厩舎陣営、馬主)の競馬熱が上がると思われる季節です。
G1レースが5週連続で開催される季節だからです。
競馬業界に携わっていれば、高みを目指して勝ち続けたい、そんな野望を持つのは当然です。

3歳の未勝利戦は、3歳の新馬戦で勝ち上がることができない馬が出走しますが、新馬戦と呼ばれる期間を過ぎると、新馬戦(初戦)を経験していない馬も、未勝利戦に出走登録をせざるを得ません。
それ以外に、競走馬としての先の道はありません。

未勝利戦で初出走する競走馬は、生まれが遅めの馬であったり、調教の進捗が芳しくなくスローペースであったり、馬体に問題を抱えていたり... あえて未勝利戦を使うこともありますが、JRAが定めたルール上、定められた期間に出走登録ができないということには変わりないので、歓迎されることではありません。

となると、厩舎陣は必死です。

この時期の3歳馬たちの中には、既にG1レースを控えている馬もいて、数カ月の差が大差となってグレードに分けられて、賞金額に表れます。

賞金を稼がなければ、競走馬としての預託料(最低限の維持費)がなくなり、また、出走登録枠と条件も合わなくなり、引退。
つまり、賞金を稼ぐことができる「競馬業界」にも登録(就業)することができなくなります。
競走馬社会も日本の経済社会と似通っていて、会社組織のようなものに似ています。
それぞれに個性と才能にあふれる新馬(新入社員)に出会ったら、その力を最大限に発揮できるよう、調教師(先生、管理職の方々)、厩務員(教育係の先輩)が先導、優秀な競走馬を輩出することになり、競馬を活性化させられます。



大物であるからこそできる、圧勝しない競馬

もうひとつ素晴らしかったレースは、いずれも同日の東京開催 6R 3歳500下 混合[指定] ダ1600 13頭。
カフェクラウン(3牡 美浦・堀宣行)の馬番号は、12番です。

カフェクラウン(3牡 美浦・堀宣行)

新馬戦で後続(2着以下)に10馬身差、かつ、保ったまま楽に抜いて勝利を飾ったカフェクラウンは、どんな圧勝劇を繰り広げるのか、1.1倍のオッズにも表れているように勝って当然と、期待されていました。

このカフェクラウンは、とても素軽い脚質で調教メニューも順調こなしてくれました。
気性に懸念がありそれを払拭するために、時期を見て使ってきたレースでもあったように思います。


さて、そのレースのこと。
スタート。好調。2完歩目が美しく伸びて、そこで馬の調子の良さが伺えました。
ミルコ・デムーロ騎手の手綱は、馬にかかることなく4コーナを過ぎてもそのペースを守ってくれました。
新馬戦では、クリストフ・ルメール騎手が4コーナー手前まで、身に余る力で行きたがるカフェクラウンの様子を見つつ、何とか時計を保つ競馬で、騎手の手綱を振り切ろうとする気性の幼さが出ていましたが、その点も見られませんでした。

ミルコ・デムーロ騎手は、最後の直線で多少馬に委ね、おそらく鞭も入らずに一着!
手綱鞭だけでここまで走る、新馬戦と同じく衝撃もありながら、素晴らしいものでした。


レースのラップタイム

レース 1ハロン 2ハロン 3ハロン 4ハロン 5ハロン 6ハロン 7ハロン 8ハロン トータル
新馬戦 12.0 11.1 12.2 12.6 13.3 12.7 12.0 13.4 99.3(1′39″3)
3歳500万下 12.0 11.7 12.3 12.9 13.0 12.4 12.1 12.8 99.2(1′39″2)

力がある馬ならば逃げる競馬でいいのでは?それの何がいけないの?と思うかもしれません。
それは、3歳の実践経験の浅いダート馬にとっては、命取りになってしまう可能性があるからです。

何がいけないのか。それは、すぐに行きたがってしまう側面もあったようで、距離に対して前半のところでその体力や脚力を使い切る短距離馬になってしまう可能性があり、長い距離を使えなくなってしまい、適正距離をどんどん縮めてしまい、1000〜1200しか使えない、出番の少ないダート馬になってしまうからです。

何が必要なのか。それは、騎手の手綱を理解することで脚を残して、疲れが出てしまいがちな後半まで、その末脚をためること。
沢山の馬に囲まれたときに集団行動の本能で他の馬のペースにつられないように、少々揉まれ慣れることです。
堀先生であれば、馬に無理はさせないし、だから中期的に馬を見ていけますし、調教師が存在する意味と馬主にとって愛情を注げる”競走馬”を見る目を養うことができます。

また、番組構成やグレード制や賞金にも、短距離馬で終わらせたくないという理由は関係しています。


日本の中央競馬におけるグレードレースは、クラシック三冠のようにすべて芝です。
また、ダートの中央GⅠと言えば、以下の2レースのみ。

【中央競馬】GⅠ
フェブラリーステークス 1600m 1億円
チャンピオンズカップ 1800m 1億円

地方のGⅠは唯一。賞金額も地方競馬では最高の賞金額です。

【地方競馬】GⅠ
東京大賞典 2000m 8000万円
【地方競馬】JpnⅠ
川崎記念 2100m 6000万円
かしわ記念 1600m 6000万円
帝王賞 2000m 6000万円
ジャパンダートダービー(JDD) 2000m 4500万円
マイルチャンピオンシップ南部杯 1600m 6000万円
JBCレディスクラシック 1400m 4100万円
JBCスプリント 1400m 6000万円
JBCクラシック 2000m 8000万円
全日本2歳優駿 1600m 3500万円

ダート馬の賞金は、有馬記念やジャパンカップの1着賞金の3億円には遠く及びません。
距離こそステイヤーズステークス(中央 GⅡ)の3600mのようなものはありませんが、1600〜2000mの距離を走ることができるダート馬が、まず条件の大前提です。(馬齢などそのほかの条件もあり)

中央競馬で頂点を目指して賞金を稼ぐことで、基本的な預託料などを賄い、プラスアルファで特別な調教や待遇を受けることができてこそ、それぞれのレースに万全の態勢で向かうことができます。

まず登録のある日本競馬で評価されて、活躍する舞台を増やしていくためには、その規定に従ってその中で勝ち上がっていくことです。
それからまた、中央から地方に転籍(転厩)しても、落ち込むことなく活躍できる競走馬を育成できます。


たった150秒のラップにも見える、末脚と直線の叩き合いに、亡くなったシャケトラの思いなのか、その姿が重なって見えたプルクラの初出走。

たった100秒のラップの刻みに、突き抜ける強さより、短命なダート馬にならないための選択をしてくれたことを見いだせた、1.1倍単勝オッズの3歳500万下のダート戦。

いずれも、涙が出るほどうれしかった、稀にみる美しいレースでした。



Thanks.

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