z 底辺と頂点を泳ぐロスジェネ|Tetrachronograph(テトグラコラム)
Jun 20, 2019

Life

底辺と頂点を泳ぐロスジェネ

ロスジェネ世代のこと

『月収2万円低い氷河期世代 政府の就職支援策は有効か』という記事を背景にした支援策を打ち出そうという時代錯誤の政策に、内心は穏やかではありませんでした。それに、腹を立てているのではなく、今になって「就職支援策」として掲げることへの疑問符です。
疑問符ですが、この深層はとても単純ですが根深くて、あらゆる社会問題と同意のものがあります。


雲が一筋の青い空

まず、就職氷河期はなぜ存在したのか。バブル崩壊の結果、その歪を埋めて再建する期間を要することになりました。それが就職氷河期です。

日本の雇用制度は、新卒大量採用による終身(長期)雇用を前提として成り立っていましたが、ちょうどこの時期、初期投資コストが膨大となる新卒採用を控えることで、企業が伸び悩むあらゆる数字をカバーしようという考えにシフトしました。
経済成長が渋ることに耐えるだけの経済力は国としてなかったのか、その器量がなかったのか、成長を促し進化することよりも、抑制することで現状維持、温存することを優先しました。
この時点では致し方のないことなのかもしれません。
しかし、この後、現在に至るまでに、救済措置らしい救済措置は行われていません。


この就職氷河期と言われる1990年代の前半から2000年代前半の新卒生にあたる、現在の30半ばから40代半ばぐらいまでの世代は、多くの社会的な立場を生み出しました。この世代がロストジェネレーション(以下 ロスジェネ)です。
派遣社員、契約社員など、雇用条件に不安を抱えながらの立場で、自分の身は自分で守り、時代の潮流をつかみながら強みになりそうな資格を取得したり、既得権者には負けない自己啓発となる行動を習慣づけたり、異業種交流などで人脈をつくり、独自の能力をつけてきました。
資格取得のマーケットが成熟したのも、ロスジェネの迅速果断が生み出したひとつのトレンドであって、企業ではなく人に付随していく資格は、個々が持つ技能を推し測る指標のひとつとして定着しました。

また、企業のニーズと労働者ニーズのミスマッチが多く発生したのも、この就職氷河期です。
労働者の立場を否定するような「非正規労働者」「雇用のミスマッチ」などは社会が生み出したものです。
ロスジェネは世間の冷たい視線をよそ眼に、その境遇を受け入れて、土着しない身軽さを生かしながら多くの業種や職種を経験したり、それぞれの状況に応じて技能などを着実に身に着け、風向きが悪いときもいいときも、そのときある社会や自分に対峙して挑み続けてきました。

都合がいいのは、政府や企業など、大きな集団を成す組織体です。
今もその体質は変わらず、既得権者たちが既得権を必要以上に誇示、支配し続けています。


この資本主義社会は、貧富の格差が露呈する社会です。
ある特定の既得権者を守り、ある特定の弱者を犠牲にする辛辣な社会です。
このような社会で、日本経済を支える担い手(労働者)が不足した現在、政府や企業は、かつて就職難を強いたロスジェネを、再び表舞台に立たせ、彼らの犠牲と引き換えに、日本経済の復興を手に入れようとしています。

1990年代には「労働機会の搾取」、次は「労働機会の強制」です。これは、目の前に広がっている事実です。


崩壊して元には戻せない年金制度、政府や自治体の歳入を超える歳出、労働人口の不足に対する事前対策の詰めの甘さ …他にもありますが、これらをロスジェネ世代に穴埋めさせようとしています。


準富裕層の9割

一方で、日本経済の落ち込みを跳ね返す勢いを見せている数字があります。

この5年ほどで、日本の準富裕層(純金融資産が5000万円以上 1億円未満)は、2000年~2017の17年で22%ほど増加しています。2000年で256万世帯、2015年で314万世帯にまで増加しました。
2017年調査実績の時点でも322万世帯と増加していて、準富裕層も増加する傾向にあるようです。
このうち、2017年時点での準富裕層の約9割を占めるのが、40代だと言われています。
この40代の準富裕層の詳細はわかりませんが、就職氷河期世代を含みます。
準富裕層における数字を参照する理由としては、準富裕層と分類される純金融資産の額面が5000万円以上、年間の金融資産を勤続の20年間で換算して、平均で年間250万円の貯蓄(金融資産の増資)と考えれば、遠からずな数字だということです。
地道な努力なのか、好機をつかみとったのか、誰もが認めざるを得ない数字をたたき出しています。


ただ、前を見て、先を見据えて努力し続け、積み上げてきた数字です。
誰もが平等なスタートラインに立てるとは限りません、それさえも関係なく、そこにある境遇を乗り越える能力を培ってきた世代なのかもしれません。


ロスジェネが見る世界


水槽の中を泳ぐ熱帯魚

ロスジェネは、底辺も知っていて、頂点や頂点の目指し方を知っています。
底辺と頂点の両者を知るからこそ、見える世界、見てきたものがあります。
失うこと(ないこと)を経験している者は強い ー。
ロスジェネをあてにするのではなく、ロスジェネに学ぶという考えにシフトするときです。


彼らロスジェネに、世界中の海を海遊する魚たちの悠然とした姿を見るような思いです。
世界中の海を海遊することに危険はつきものですが、ロマンの尽きない、予想を超える壮大な可能性を含んでいます。
世界はまだまだ、いつだって、面白いものを見ることができます。


ロスジェネの見る世界は、発展途上です。
三原色ではなくて四原色で見えない波長の光を見ているのかもしれません。



Thanks.

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