November 29, 2019

Horse Racing

ジャパンカップ回顧 vol.2 国旗を背負う

国際交流

最高峰の社交

所以もなにも、詳細を知らずして好きになったレースがジャパンカップです。
外国人が馬を引くパドック、その堂々たる姿に感動するばかりでした。
私の思い描く、堂々たる国際交流と社交の場がそこにありました。

2015年11月29日ジャパンカップのパドック

そのパドックで、国際招待厩舎陣営の厩務員たちは、ジャケットスーツとタイなどを着用、新品ではなくとも手入れの行き届いた革靴を履き、正装します。
正装は活動的な行動には不向きですが、それを感じさせることは全くなく、自信を持った姿でハミを引く競走馬を難なく引いてリードします。

社交の場での正装、その振る舞いは、その本人の気持ちを引き締めるものでもありますが、それと同時に、社交の場に在るものに対しても、敬意や敬愛を以って接することが本来の正装することの根本なのです。
その姿は、競馬の主役とも言える、競走馬の姿にも重なります。

今年は、彼らの周囲を巻き込み最後に包み込むような華やかな雰囲気に包まれたパドックを見ることができませんでした。
国際招待の競走馬の参戦がなかったからです。


国際社会にうまく溶け込み、対等に渡りゆくのであれば、まず相手に合わせていくこと、社交のなどの処世術は備えておくべきものです。
国際招待の厩舎陣営、馬主たちが見せる姿は、日々鍛錬を重ねてきたことを自ら誇りに思い、誇示しつつも、それを颯爽と華やかに表現して、その周囲を社交の場に取り込み、巻き込み、魅了させてしまうことそのものを教えてくれました。
この姿が見られないことは寂しいことですが、同時に危機感もあります。

2015年11月29日ジャパンカップのパドックでのイラプト号とF.グラファール厩舎陣営(フランス)

日本の中央競馬は、富国強兵に基づいていて、太平洋戦争後の混迷する時代をも越えてきた経緯もあって、ひとえに、欧州文化を素直に受け入れて、社交術のひとつとして紳士(侍?)らしく振る舞いなさいということも難しいのかもしれません。
増して、国際化に伴う国際交流の一環だという考えもあって、自国の伝統や作法ばかりを重んじることもできません。

そして、競馬事業は、復興を願う景気を押し上げるための娯楽でもあり、農林水産省の貴重な財源でもあります。
明確な活路を導き出すことより、まず思考回路を繋ぎ合わせて、議論を積み重ねることで、視野を広げていき、方向修正をしていけばいいのだと思います。

日本競馬には、イギリスのニューマーケットや、欧州各国の競馬に倣って構想を練り、積み重ねてきた結果、今に続く日本ならではのレースやその条件、トレセン、BTCなどの施設、その血統、その生産からトレーニング、放牧時の育成方法、東西や地方に分散するその組織構造、観客など、財産といえるものが生まれ、根付いてきました。
そして、日本の競走馬が、世界でも通用する時代になったからこそ、日本が国旗を背負って国際招待レースにも出走し、勝利するまでに成長しました。
岐路に立たされているような今こそ、日本が世界をけん引するように、新しい概念、通念となるものを生み出してもいいものではないかと思っています。

不要な費用を削減した結果のアウトプット

第39回ジャパンカップで国際招待の競走馬がいなくなったことで、目に見えて変わったことがもう一つありました。

競走馬が馬装で使用するゼッケンです。
これは、ジャパンカップ当日の1R発走前に気が付いたことです。


レース当日、開門時間の8:00に入場して、いわゆる開門ダッシュ組の友人に、ジャパンカップ出走馬の1/4ミニゼッケンの購入を依頼していました。
そのミニゼッケンは、販売予定価格が1,500円でしたが、1,200円に値下げされました。
その理由は、「国旗の印刷がなくなったため」ということでした。
購入ゼッケンを確認すると、確かに国旗の印刷がありませんでした。

一方で、前日から発売の馬番ボールペンには日本の国旗の印刷がありました。
ボールペンの製造(国旗印刷)の整合性を取るだけの時間もなく、調整が間に合わなかったということです。
この整合性の取れない限定グッズからも、読み解くことができるのは、JRAが、国際招待の競走馬がいないことを想定はできても、それを考慮しなかったということです。

また、本馬着用のゼッケンも同様、国旗の印刷はありませんでした。

2019年11月24日ジャパンカップのジナンボーのミニゼッケンと馬番ボールペン
2019年11月24日ジャパンカップの出走ゼッケン着用のジナンボー

ジャパンカップの直近の東京開催のGⅠレースの「天皇賞(秋)」にて、人気の注目馬が多数出走し、大規模なキャンペーン(TVCM、各種広告、抽選やプレゼント、イベント)を行ったこともあり、この動きを見ると、JRAは、今年のジャパンカップの国際招待は厳しいものになるという仮説はあり、数年前からここ2、3年の動きを読み解き、既に織り込み済みだったのでしょう。
今年からタイミング良く、レースの冠名にロンジンの名前があり、サポートではなく一大スポンサーとなったことも、辻褄が合います。

いずれにしても、主催のJRAが、彼ら自身の財源やリソースをジャパンカップに注ぐより、人気の馬による集客のレバレッジやスポンサー契約を最大限活用し、天皇賞(秋)に資金を投入したことは事実で、ビジネスとしては合点がいくものです。

しかし、煮え切らない思いは尽きることもなく、依然、濃霧の中にいるような感覚です。

2014年11月30日開催の第34回ジャパンカップのパドック

総論

ジャパンカップは迷走しています。
国際招待競走と、富国強兵(馬)の下で、世界に駆け出していく日本の厩舎陣営たちは、それぞれの役割を果たし、国内外問わず、観客や業界関係者からも認められるようになりました。
そこに頼りきってしまっているJRAの姿が見えてしまいました。

貿易で言うと、輸出には力を入れるものの、供給過多になると途端に輸入に制限を設けたり、輸出(海外出走)に舵を切ったり、自国保護に走り、国際社会から理解を欠いてしまう、不平等貿易を続けていくような姿にも見えてしまいます。

日本競馬は、国際招待競走の開催により、海外からの資本や文化が投入され、それを好機に親睦を深めることで国際交流を活発化させ、日本の高度経済成長を支え、日本競馬発展の大きな力となり、その恩恵を受けました。
バブル崩壊後も、国際招待により、以前と変わらずジャパンカップに参戦してもらっていたのなら、今こそ対等な立場で、国際招待を積極的に行っていくための施策を講じて、国際社会に貢献しなければならない時です。

獲得賞金も有馬記念に並ぶ3億円です。これが大きなトリガーです。
国際招待される厩舎陣営、馬主、その先にあるそれぞれの国は、このニンジンのように目の前にぶら下げられた最高賞金というマネーだけで動くのでしょうか。



Thanks.

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