Jun 13, 2020

Horse Racing

競馬と経済を考える vol.1

競馬は多角的視野を広げるに絶好の指標だ

競馬の売上

数日前に、高知競馬の売得金額についての記事を拝見しました。高知新聞のweb版の記事です。
記事のタイトルに” 高知競馬が無観客でも売上1.6倍に ...”(2020年5月20日)とありました。前年比の数字だそうです。
何に対しての前年比であるか、詳細分かりかねますが、この記事が出るまでの4月いっぱい、または5月の中ごろぐらいまでの数字のようです。

高知競馬で無観客開催が始まったのは3月1日。中央競馬(JRA)や他の地方競馬と歩調を合わせた判断だった。高知競馬最大のレースで中央と地方の強豪馬が争う「黒船賞」(3月10日)も、今年は観客を入れずに行われた。
その日の売り上げは、1日としては過去最高の10億8900万円。3月の1日平均の売り上げは前年より22.8%多かった。3月に開催があった全国12の地方競馬のうち6カ所が売り上げを減らす中、高知競馬は1番の伸びを記録した。
(略)
 4月13日~5月17日の開催12日間は計79億9100万円。過去最高の564億1200万円を売った2019年度の同時期と比べ、66.0%も増加した。 ...

高知競馬組合は、この要因をCOVID-19による外出自粛、勝馬投票券の実販売所での購入ができないことから電話、インターネットによる勝馬投票券販売がが伸長したことにあるとの見解を示しています。同時にインターネット会員の登録も増加しているとのことです。
インターネット会員が伸長する動きは、JRAの主催する中央競馬も同様です。

ただし、中央競馬につていは、代表されるGⅠレース 第87回日本ダービー売上は、前年比割れの前年比92.3%とされています。
スポニチ Sponich Annex(2020年5月31日)より

この数値については、何がインパクトしているか、少し慎重に見てもいいのではないかと考えました。

  • COVID-19緊急事態宣言による
  • 自粛要請(自宅待機) 雇用機会喪失、消費支出への影響
    自粛要請(自宅待機) 投票方法限定(勝馬投票券販売停止、電話、ネット投票の影響)
    自粛要請(自宅待機) 投票方法限定(勝馬投票券払戻停止(払戻期間延長)の影響)
  • 人気馬出走の可否による影響

  • アーモンドアイのインパクト

    2019年天皇賞(秋)の優勝馬 アーモンドアイのウイニングラン

    安田記念の売上は、世界的にも注目されている「絶対王者 アーモンドアイ」の出走、世界的な大記録(GⅠタイトル8冠)もかかったレースです。
    バイアスのかかった数字であることして留意する必要があります。
    アーモンドアイが出走するレースにバイアスがかるという根拠は、2019年に行われた国際招待のあるジャパンカップの対昨年比、このジャパンカップと同年 天皇賞(秋)との売上の比較に基づいています。


    2018年までのジャパンカップ開催には、国際招待の外国の競走馬の出走や人気競走馬の出走があり、天皇賞(秋)よりも売上があるのが通例でした。
    また、日本の誇る国際招待レースとして世界の競走馬のレーティングにも影響する指定国際競走です。
    世界の国際競走の舞台で活躍するランフランコ・デットーリ、ヒュー・ボウマン(豪)に代表される騎手もこのレースに騎乗するため来日した年があります。

    ジャパンカップの売上は、2019年開催で184億8670万7600円。アーモンドアイが出走し、優勝した2018年開催で204億7549万1300円。つまり、2019年開催は、対前年比90.2%です。
    2019年開催のジャパンカップは、アーモンドアイが出走した、同年開催の天皇賞(秋)の売上(215億7334万7900円)も上回ることはできませんでした。

    こういった経緯からも、アーモンドアイの出走は売上に大きくインパクトするという仮説は、売上の数値を見る上では考慮に値する材料と言えます。
    アーモンドアイの出走するレースは売上が期待できると考えられます。

    ただ、2020年の安田記念の売上は、前年を割れこむものでした。
    アーモンドアイが出走し、GⅠタイトルを持つ競走馬が実に14頭中10頭がGⅠ優勝馬であり、過去にも類を見ないほどの強者の集結するレースです、期待値は高まっていたはずです。
    しかしその売上は 対前年比93・0%(190億2941万8000円)でした。
    スポニチ Sponich Annex(2020年6月8日)より


    一重に説けないマーケット

    競馬の売上は、巣篭もり需要は地方競馬ではより大きくその売上を押上げましたが、JRA主催の需要はネット販売の普及でより購買層を広げたものの、勝馬投票券での売上をカバーできるものはなく、地方競馬(開催場により異なる)と中央競馬は明暗を分ける形になりました。
    競馬の発展(売上をまず筆頭に)を構想するにしても、地方競馬と中央競馬、地方競馬を混同せずそれぞれに理解する庫必要がありそうです。

    売上が前年比増になっている高知競馬は結果として歓迎できますが、問題は、無観客開催にして戦略ではないものが売上に寄与している可能性が含まれている(その可能性が高い)ことです。
    ただ、売上増の明確な裏付けとなる数字や事実がまだ盤石ではありません。

    COVID-19の外出の自粛などによりライフスタイル、日中に過ごす時間の使い方に変化があり、平日の日中開催の競馬など物理的に注目される機会が少なかったのですが、緊急事態宣言の発令により、自宅待機やテレワークなど時間の使い方に変化のあった(余裕ができた)平日日中にうってつけの娯楽、ギャンブルとなり、注目が集まったのかもしれません。


    ここで参考にしたいのが、通信業界の動向です。

    2020年3月〜5月いっぱいの通信業界の売上は、首都圏、主要都市、政令指定都市などのテレワーク需要や自宅待機の影響で、通信回線新規契約の需要が高まり(対昨年比、売上金額)、株価下落や相対的な経済機能の低迷に反発するような動きで推移しました。
    通信回線は、現代では生活必需品としてのインフラのマーケットのひとつですが、その需要そのものが高まった結果です。
    その性質が、本来の繁忙期と少々重なり、続伸につながっていますし、「循環」で続伸しているのではなく「マーケットの開拓」そのもので、マーケットの母数を広げました。

    緊急事態宣言の発令前の中央競馬の売上の増加は、顧客層や販路の循環により増加したものなのかもしれません。
    それは緊急事態宣言発令後にインターネット投票会員獲得のためさまざまな施策を打ち出し、会員数は増加したものの、売上が前年比割れした理由は、母数にはあまり変化がなかった、つまり、増加したインターネット投票会員による売上は、現地での馬券購入による売上を賄うことができなかったのです。
    現地販売での販路が途絶え、多くの顧客を失ったのです。


    中央競馬と同じように販路として、インターネット投票しかない高知競馬は、売上を伸ばしました。
    緊急時他宣言の発令後にインターネット投票会員の増加、売上に対するインターネット投票比率の上昇に加え、緊急事態宣言発令以前から現地売上が低迷していたことも考えられます。


    競馬はギャンブルで、一般消費者の衣食住や生活必需品に直接かかわるものではありませんが、世相を必ず反映して、バブル崩壊後やリーマンショック後のより、さらに複雑にその存在意義を変容させています。
    景気や経済の影響を強く受けるという単純なものでもなく、私達の生活様式や他業界とのつながりやバランス、わたしたち一人ひとりの価値観の変化とともに成長、発展していたことに気付かされます。


    数字は先読みしたり、追うべきであっても、それは最優先すべきものではありません。
    今なぜ、競馬が存在するのか、何が競馬の役割なのか、Why(なぜそうするのか)が最優先です。
    それぞれのwhyに対する答えに真摯に向き合えば、大半のことはつながっていきます、進む道は開かれ続けます。
    こうして見えてきた競馬と経済は、すごく面白いと思っています。

    動き出した2020年の2歳新馬たちの調教

    2020年夏競馬の新馬戦も、始まっています。



    Thanks.

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