イヤーエンド 贅を尽くしたメッセージ vol.2

高すぎるプライドと違う自尊心

虚栄心と共に生きる


塩野氏の言葉に、ある種の虚栄心を持つこととあります。


朝日は雨が降っても必ず望める

虚栄心というメガワードは、いい意味で用途されることがあまりにも少ないように思います。

広辞苑には、みえを張りたがる心。と記されています。

見栄を張るとは、外観を飾る。うわべをつくろって必要以上によく見せようとする。と記されています。


外見を飾ることの本質にはいくつかあると思いますが、自らを偽るために飾ることもありますし、表現の一環として飾ることもありますし、何を意図するかによって、虚栄心の在り方も大きく異なってきます。


塩野氏のお話しされる虚栄心は、前述したものと指し示す本質が少し違います。

意地を持って、つまり、自尊心を持って働くことを指しています。


2022年の9月8日に、エリザベス女王が崩御されたことを例に、お話しされています。


エリザベス女王は、イギリス連邦王国女王(大英帝国)のコモンウェルスの女王としてのプライド(≒虚栄心)をその葬儀が執り行われ、納められるまで、誇示し続けました。


改めてエリザベス女王の葬儀を振り返ると、その威厳たるもの、主としての務めと、その務めを全うしようという心は必然であり、ご自身に宿っていた、誇りと強い虚栄心や意地にも支えられていたものだと気づきます。

最期を奏でたバグパイプのように、そこはかとなく心に響いていて、今も止むことはありません。

絵画のような風景には、どこまでもその威厳を示し続けていて、脳裏から完全に消えることはありません。




ー(略)ー 彼女が大英帝国の女王、コモンウェルス(英連邦)のトップとしてのプライドを最後まで持ち続けたからだと思います。


葬儀でも、英国の首相よりも先にコモンウェルスの代表が弔辞を読みました。彼女は大英帝国の女王として死にたかったわけです。それが彼女の譲れない一線であり、生き方に威厳を与えたのです。



分類されない


どこかに属すること、カテゴライズされること、即ち、分類されることですが、それは安堵できるコンフォートゾーンにいられることを示しています。

マズローの欲求5段説にあるように、承認欲求のようなものはわたしたちの中に必ずあり、社会に身を置く人間社会では、必要な欲求の一つです。


現代でも確実に存在している欲求ですが、それは全てが必ずしも必要なのか、といった是非を問う捉え方もあります。

ただ、この現代よりも少し前の、塩野氏が育んできた時代は、この承認欲求は、とても強い時代だったのではないでしょうか。

その時代に、駆け出しの承認欲求が強かったであろう時代に、学ばれたことがあるそうです。


「人と同じことはやらない」、ということ。


司馬遼太郎氏に1作目の「ルネサンスの女たち」を評価していただいてからのことだそうです。

2作目の「チェーザレ・ボルジアあるいは優雅なる冷酷」で、本の帯に推薦の言葉をもらおうと依頼されたそうですが、司馬氏に断られたのだそうです。



僕が帯を書いたら、塩野七生はカテゴリーに分類されてしまう。



当事者ではないために、冷静に聞くことができる言葉ですが、塩野氏にとっては、その思いを遠く突き放されるような思いを抱いた言葉ではないでしょうか。


今だから言えることかもしれませんが、学びは、そのときにわかるものでもなく、経年で消化して身になったと認識していくものかもしれません。




【塩野七生】若いあなたへの「ラストメッセージ」






不動ではないから現役でいられる


現役という言葉ですが、

現にある職務に従事して活躍している人。

とありますが、進行形であることを言いたいのです。



年始の朝焼け


休むことは必要ですし、集団社会で考えたときに、その集団の中で相対的に主役でいることはできません。

世界や社会が回っていくためには、役も回し、明け渡して、それぞれがそれぞれの役に回っていくことが、必然の流れだと思っています。


相対的な役としては、いつまでも主役ではありませんが、社会における絶対的な自分は、いつだって主役なのです。

いつまでも社会の相対的な束縛に無意識で陶酔していても、虚ろとした毎日をやり過ごすことしかできません。


不動なこと(絶対に揺るがないこと)はないと思っています。

いつだってそれなりに不安定さはあります。

世界は常に何かのプロセスの途中で、常に動いています。

不安定だからこそ、それに負けない力をつけようとする強さ、逞しさ、賢さは必要です。

そのときに無駄に思えることも、後になって、必ずその人の深みになるのです。

 

後悔先に立たずです。


塩野七生氏の言葉は、わたしたちに、生きる知恵と力を授けてくださる、この先を切り開くための黄金の書状なのです。




Thanks.