新潟競馬場、夏

新潟

車での来場を推奨

中央競馬場は全10場あります。
東西(美浦と栗東)のトレーニングセンターを中心に、東京と中山、阪神と京都、北は札幌と函館、本州は、福島、新潟、中京、そして小倉まで配置されています。(京都競馬場は大規模改修工事のため休止。)


その中でも、新潟競馬場は、全10場の中で唯一車での来場を奨励している競馬場です。


来場するための既存公共交通機関との接続はなく、利便性はあ良好ではありません。
当競馬場の年間の開催数は多くなく、開催のためにこれらを整備することは現実的ではありません。


交通の不便さを逆手に捉えて立地や条件を活かし、期間中の開催を適切に管理している特異な競馬場です。

持て余した土地活用としても有効で、来場収容者数をまかなえる駐車場としての敷地面積を確保し、駐車利用料金を無料で提供することで、車での来場を促しています。


乗車運賃が有料の民間で共同運営のバスを利用すれば、車がなくても来場できます。

ただし、運行本数に限りがあり時間帯に限りがあるため、バスの時間を多少考慮しての利用を意識しなければ、たちまち交通手段を失ってしまいます。

タクシーの利用も可能ですが、同じく競馬場を利用する競馬関係者の利用と重なり、関係者の移動を優先するため、利用は推奨できません。


競馬開催の全体を整える役割

そして、地方都市開催(札幌、函館、福島、新潟、小倉)は、主要都市開催を支えています。


どの競馬場も常時開催をしていると馬場状態が乱れ、公平なレースを行うことができなくなります。
公平なレースを行うためには、そのための整備の期間がどの競馬場にも必要です。

そのほかにも地方都市開催の意義はありますが、このようにクリティカルな理由が大きいように思います。



芝コースでは、芝がめくれ、高低差やクッション値にばらつきが出ます。
開催場ごとに気候や土壌の性質、開催期間が異なるため、芝の種類や組み合わせも異なります。
芝を上層部のみ植えたり、種を撒き、育成する期間が必要です。


ダートコースでは、砂が飛散、流出し移動するため、高低差や砂圧(深さ)にばらつきが出ます。
敷設する砂の種類や敷設層は全場共通ですが、ひとレースごとにハローがけ(均す作業)を行っています。
砂の量も減少し、均一化された砂の粒子も細かくなり、不純物も混流するため、砂の洗浄や入れ替えが必要です。


競馬場の特性により競走馬や騎手の適正も鑑みても向き不向きはあります。
公正かつ公平な開催としては、地方都市開催は必要不可欠です。
開催日数は多くなくても、全体の競馬開催をバランス良く整える役割があるとも言えます。



競馬場設備、つくりの印象

新潟競馬場に初めて来場しましたが、印象としてはコンパクトかつミニマルな競馬場です。
パドックも少々小さめ、観戦スタンドの横幅もターフと同じく小さめです。
日差しの強い夏季開催のある競馬場ですが、パドックには日差しを遮る施設や植樹などは殆どなく、風も通り難いようなので、熱中症などには注意が必要です。


観戦スタンドは二つ、ターフに面しての幅はおおよそ直線距離の1/4ほどといったところで、こちらもコンパクトにまとまっています。
スタンド席最下段からターフまでの距離が短く、1階、2階席スタンドからでもターフの馬たちを目視して認識できる距離で、親近感と一体感があります。


調教師、厩務員席が一般観客席の真横に設置されていて、大規模競馬場での開催ではあまり見られない関係者のレース中に待機する様子も、観察することができます。


1000m直線のスプリントコース

新潟開催の夏競馬の風物詩でもあるアイビスサマーダッシュは、芝1000m戦で、直線を一斉に走り抜ける姿を間近で観戦できます。
新潟競馬場や、福島競馬場でのみ行われるスプリンターに向けての番組で、カーブのない直線距離での競馬は迫力満点です。


第21回アイビスサマーダッシュのゴール板

競馬場の進化

来場した日は、新潟競馬場では3つのレースでタイムレコードがはじき出されました。


芝コースのクッション値としては、馬にとって硬い値は示しておらず、良好な状態です。
競走馬自身の力もありますし、馬場整備が適切に行われ、整備してきた結果でもあります。


タイムレコードを単純に新記録としてではなく、競走馬や馬場整備技術などの進化と捉えました。
根がしっかり張るエクイターフという種類の芝を、芝がよく育成する日差しの良好な初夏に育成できる、新潟ならではの夏競馬のあり方です。


競馬場は、天候や風土など、外的環境の変化の影響がとても強く、人間が思うようにコントロールできないものが多くあります。
それでも、考えることをやめず向き合っていくことで、競馬業界やわたしたち自身が、活路を見いだせるという事実を目の当たりにしました。


日差しは痛く焼け付き無風の開催日に来場しましたが、これが「夏競馬」なのかと、洗礼を受けたような気持ちになりました。



今日もありがとう、夏競馬の馬と人と新潟。




Thanks.