February 1, 2021

Horse Racing

横山武史騎手と競馬のX

武史騎手の2020年

横山武史騎手は、2020年、JRA競走で94勝を上げ、史上最年少の22歳での関東リーディングジョッキーのタイトルを獲得しました。
郷原洋行(元)騎手が1967年当時23歳で79勝を上げて関東リーディングを獲得して以来の記録更新です。

2020年は、無観客競馬が競馬開催日程の半分以上を占めましたが、僅かに観客を動員しての開催で指定席券を購入し、目の前で武史騎手の騎乗を観戦すると、彼がリーディングジョッキーになることは、明らかであると実感しました。
その騎乗は、他の騎手と比べることよりも、勝ちたいという彼自身の気持ちが、その騎乗で見せる粘り強い騎乗に溢れ出ていました。

札幌 函館 中山

武史騎手は、函館の夏競馬でその才能を一気に開花させました。
武史騎手は発馬直後のレースの位置取りとその判断が素早く、前団の好位置をキープする先行する競馬で勝利を重ねました。
函館競馬は、3、4コーナーがスパイラスカーブ(カーブの径が小さめ)のため、コーナー進入の際にスピードを落とさずに走行できますが、コーナー出口のカーブが急なため、外に広がり(膨らみ)易く、馬群も散らばり易くて進路が開けます。
前団で脚を溜めて、馬群がバラけたときに一気に溜め込んだ末脚を活かし駆け抜けるという競馬が目立ちます。
芝コースでの時計が掛かる馬場状況になると、先行有利の要素はより強くなります。
武史騎手の函館競馬での勝利や好走は、彼の適正が合致しているようです。
武史騎乗を依頼する馬主や厩舎陣営がそれを理解しているはずです。

ゴール前の長い直線勝負の東京コースでのレースでは、相対して他の馬との位置取りやレース配分などをを組み立てることも必要で、ハナを切ったり、末脚を溜めるだけでもない、より戦略的な競馬が向いています。
まだまだ戦略として詰めの甘い競馬も見られるので、課題はありますが、見る度に武史騎手の競馬は進歩していて、毎度どの騎乗にも何かしらの挑戦をしているような様子が伺えます。
競馬での位置取りであったり、レースのペース配分、調教をつけている馬や追切をしている馬では、自分の競馬をすることよりも、馬にとっての走りができるように、馬のハミを感じて、かかりっぱなしということはなく、折り合いをつけています。
翻って、これは、まだまだ発展途上で、伸びしろがあるということでもあります。東京開催の騎乗が楽しみです。


2020年の有馬記念直前のターフ風景

新馬戦と未勝利戦

競馬場や概況など、外的要因以外でも適正を測る指標項目があります。
出走馬のクラスについてです。

新馬戦や未勝利戦は、管理厩舎側としての、新馬戦や未勝利戦に照準を合わせて最大能力が頂点に近い、または発揮できる状態での出走スケジュールと馬の状態を調整ができるかという点があります。
また、レース初戦や、経験の浅い競走馬たちには、観客の声や環境音などに怖気づかず堂々と振る舞えるよう躾けること(現在無観客ですが)、ゴールまで安全に完走させること、馬のやる気を喪失させることなくゴールまでハミ受けをコントロールして覚えさせること、先頭集団での走行(行く先を遮るものがない心地よい感覚)を経験させることなども、競走馬として生き抜くためには大事なことです。
調教と実戦の違いを意識しながら、競走馬のポテンシャルを早期発掘して、それを人馬共に理解し、次なるレースに備える、馬への英才教育という意味合いも込められています。
まずは無事に出走し、普段の調教からコンビを組んでいる騎手に依頼する、調教師や馬主の意図する競馬ができることに徹することが目下の目標になるかもしれません。

ある程度完成されていると判断できて、実戦向きだと考えられれば、勝ちにいくための競馬を組み立てます。
経験豊富で馬やコースの適正に合うと思われる騎手に騎乗依頼をします。
決して鵜呑みみはできませんが、競馬新聞などに記載される定量的なデータと、定性的なデータの両者で見る軸は共に必要で、成長が著しい新馬の場合は、その日の状態をできれば自分の目で確かめることのほうが大事になります。

新馬戦は、レースの前半で前に出ていくことが求められます。
未勝利戦は、前に行くことも大事ですが、その馬らしくレースをすることが求められます。

新馬、3歳未勝利戦の馬を見てのレースをどのように展開するかの判断は、迷いなく行える騎手が向いています。
熟練の技術、実績馬に騎乗するその背中の感覚を知るトップジョッキー、迷わず進めるジョッキーがこれに当てはまります。
横山武史騎手は、OPクラス以上の騎乗よりも、未勝利戦や1勝、2勝クラスでの騎乗経験が多く、そこで勝利数を重ねてきたので、順応性や適応性は高いところにあります。
勝利数の割には賞金額が少ないのはそのためです。

シャイニングライトと横山武史騎手未勝利戦スタート後1周目スタンド前
シャイニングライトと横山武史騎手未勝利戦ゴール直前

所属厩舎のこと

デビューする若手騎手たちは、誰もが実績がなく、実戦経験がなく、経験豊富とは言えません。
管理厩舎はここで大きな役割を果たします。

勝ちたいと思っているのは、馬主、厩舎陣営、騎手たち誰もが思うことです。
ベテランの騎手たちに騎乗を依頼すれば、それは当然のことながら勝利には近づきます。
そのハンデを乗り越えるために、若手騎手には減量制度があり、若手騎手が所属する厩舎はその減量を加味して騎乗させます。
その減量がなくなる勝利数(JRA通算100勝 かつ、免許の通算取得期間が5年未満:2021年1月末日現在)までに若手騎手は経験を積み、厩舎も積極的に騎手を育てます。
実情はわかりませんが、ここで厩舎と騎手たちは後に騎手がフリーで活躍することになっても、その信頼関係のもとお互いを理解して、より充実した競馬を実施できます。

横山武史騎手の所属する鈴木伸尋厩舎は、過去にも津村明秀騎手を所属騎手として育て上げて無事フリーへと転身させてきました。
健全な師弟関係があって競馬業界の発展や進化があります。

横山武史騎手の一日の騎乗数が増え、落馬や騎乗停止、惜敗などがあったときに、言及し、騎乗数の調整や勝てる勝負で勝ち切る選択をする旨、ご指導されたようです。
逆に、お互いにその所属厩舎の縛りに固執することもなく、プロフェッショナルとして、成立しています。

結果として、横山武史騎手の関東リーディングの獲得、鈴木伸尋厩舎の2018年からの年間勝利数も20勝前後で推移、2016年のリーディング3桁順位から2017年には二桁順位へと回復し、安定するようになりました。
特に、近年、同一厩舎での上位拮抗のリーディングとなっている中で、年間の勝利数において安定した数字が取れるようになったことは、何かしらの結果です。


アポロドリームと横山武史騎手と鈴木伸尋先生

勝者か敗者か Xか

競馬では勝敗があって(同着もあります)、たとえその差が鼻先であっても報奨となる賞金額は、1着賞金額と2着で大きな差があり、2着賞金額は1着賞金額の50%にも満たないものです。

結果は結果で、目指すべきものは競馬である以上、出走レースの1着ですが、出走奨励金や特別手当などもありますし、ゼロではないところを目指します。
それでも測れないものとしては、相対や他との比較による評価としての記録、それぞれに綴られるストーリーです。
競馬は、競馬、騎手、管理厩舎スタッフ、生産牧場、育成牧場、獣医師、装蹄師、馬主、興行主と、関わる人が多い分それぞれのストーリーがあります。
競馬の実戦の中では、主に、競走馬、騎手、管理厩舎スタッフの軸で見ることが必然になりますが、何かの一人称として見ていけば、もっと競馬への視野は広くなります。
観客目線だけではない視点です。

主催者側から考えると、競馬開催による収益から、競馬関連事業や関係の深い農林水産省関連の事業、省庁を超えて、社会福祉や環境、国際問題など、SDGsへの関わりもあります。
その認知も可能なはずです。

ありたい姿を描いて、進んでいければ見えるもの「X」は、世界をもっと広げていくはずです。



Thanks.

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